逗子の自家焙煎コーヒーが教えてくれた、朝のゆとりのつくり方。

JR逗子駅から徒歩8分、線路沿いの一本道を歩いて行くとその店はある。
引き戸を開けると、焙煎機の低いうなりと、香ばしいコーヒーのアロマが迎えてくれる。 カウンターには10種類以上の生豆がずらりと並び、それぞれに手書きのキャプション。ここは慌ただしい日常から、少しだけ離れた場所——。

522coffee roasterYのオーナー、村澤さんが焙煎した豆は、yohack lifeのノベルティとして届けられる一杯でもある。
なぜこのコーヒーなのか。なぜこの場所なのか。
村澤さんの話を聞いていると、一杯のコーヒーに込められた想いが、少しずつほどけるようにわかってきた。
香りが夢の始まりだった、そして逗子へ

会社員時代、上司の紹介で訪れた都内のコーヒー焙煎店がすべての始まりだった。店頭に並ぶのは焙煎前の生豆——緑がかった白い豆を、その場で注文を受けて焙煎してくれる。
「コーヒーは好きだったけど、今まで生豆を見たことがなかったんです。茶色い豆しか知らなかったから、もうなんなんだっていうぐらい衝撃でした」と村澤さんは振り返る。
その帰りの電車の中で、焙煎したての豆の香りがずっと寄り添ってきたという。

その瞬間に、「いつかこんな焙煎店をやりたい」という思いが芽生えた。以来10年以上、その夢を心の中に持ち続けてきた。
夢が現実に動き出したのは、思いがけないきっかけだった。
ともに店を開こうと話していた娘さんを亡くし、村澤さんは「自分がどこに行ったらいいかわからなくなった」という。娘さんが生前「一緒に見に行こう」と誘ってくれていたのは逗子・山の根。

ある日、息子さんの車で茅ヶ崎のコーヒー店に向かう途中、スマートフォンで何気なく不動産情報を見ていたら、山の根の物件が目に入った。
「すぐ電話して、見に行くことにしたんです。娘が『山の根』って言ってたその場所だったから」
開店に対してあまり乗り気でなかった息子さんも、賃貸契約書を見て、肘でそっと村澤さんをつついた。住所の番地が3丁目の “5-22” だった。

なんと、いくつもの店名候補の中からようやく決まった “522” と一致した。——4、5年前に自分でメモしていた “522コーヒーロースター” 。
愛犬の名前 “コツブ” をそのまま数字にした、電車の中でふと思い浮かんだ言葉だ。

立地は駅前でも商店街でもない住宅街。家族をはじめ多くの人に反対されたが、村澤さんは迷わなかった。
実際に物件を見た息子さんもすっかり気に入り、家族も村澤さんの揺るぎない熱意を前に、応援することを決めたという。
「高い豆を特別な時だけ飲むんじゃなくて、毎日美味しいコーヒーを手軽に飲んでもらいたい。だから地域の方が来てくださるここがいいと思ったんです」。

店づくりも “みんなでつくる” ことを大切にした。
壁の塗装や板張りなど、娘さんのお友達をはじめ大勢の仲間が集まってくれた。 一人ひとりが手を動かして仕上げたこの空間には、そうした人たちの想いが込められている。
そして2024年5月、522coffee roasterYはオープンした。

yohack lifeとの出会い——「ゆとりのある朝の一杯」を作る

オリジナルブレンド制作のプロセス
yohack lifeのノベルティとしてのオリジナルブレンドは、 “ゆとりのある朝の一杯” というコンセプトから生まれた。
「存在感があって、だけどちょっと優しくて、その中でやっぱりちょっと元気が出るっていうような感じ」。村澤さんが選んだのが、インドネシア・トラジャとパプアニューギニアの組み合わせだ。

トラジャはインドネシア・トラジャ地方で採れる希少な豆。かつて “幻のコーヒー” とも呼ばれた。苦味と重厚感、飲んだ時のインパクトがある。
「ちょっとピリッと刺激を受けて、やる気が出る感じがいいんじゃないかと思って」。
一方のパプアニューギニアは、爽やかな酸味とマイルドな口当たりが朝のコーヒーにぴったりだという。
ただ、同じ焙煎度で仕上げてしまうと、パプアニューギニアの爽やかな酸味が消えてしまう。トラジャを浅くすると今度は苦味が出なくなる。

「だから後から焙煎を違う度合いでやって、後から混ぜたらどうなるんだろうって」。深煎りのトラジャと中煎りのパプアニューギニアをそれぞれ仕上げてからブレンドし、二つの個性を両立させた。
このブレンドを一言で表すとしたら?の問いに、村澤さんはしばらく考えてから言った。
「ホッとした気持ちの次に、何かをしてみたくなるようなコーヒー」

「気持ちが落ち着かないと、次に何かをしようという気持ちって起きないと思うんですよね。だから、ホッとできて、散歩に出た時にちっちゃいことでも何かを見つけられるような1日になったら嬉しいなって」

コラボのきっかけ——家族のご縁から生まれた一杯
村澤さんが大成有楽不動産社員のご家族(義理のお母様)というご縁から生まれた、今回のコラボ。
社員が実際に店を訪れ、yohack lifeのフィロソフィーを村澤さんに伝えたとき、その言葉は深く響いた。
yohack life フィロソフィー
おうちで、もっと、空間や時間のゆとりをつくれたら、ココロのゆとりも広がっていく。それぞれが穏やかで、優しい気持ちでいながら、好きな時間を過ごしていける。そんな、かけがえのない日常へ。自分らしく、ゆとりをつくり、豊かさで満たす。多彩な発想と創造を住まいづくりに、もっと。「ゆとりとか豊かさというのは、今の時代、やっぱりお金だけじゃなくて、人と人とのつながりなんじゃないかなって感じます」と村澤さんは言う。
店内には、コーヒー豆の袋をアップサイクルした商品も並ぶ
コーヒーを通じて人が集い、その場で縁がつながっていく——自分の店で日々感じていることと、yohack lifeのフィロソフィーが重なった。
だからこそ、既存のブレンドから選ぶのではなく、オリジナルのブレンドを作ることを提案してくれた。フィロソフィーを受け取り、何十種類もの豆から厳選された一杯は、縁と共鳴から生まれた必然の味だった。
522coffee roasterY がつなぐ縁

「お客さんたちが店内で座って焙煎をお待ちになるんです。そうすると、どちらからいらっしゃったんですかって自然に話が始まって」
522が不思議な縁を引き寄せる。顔も知らなかったご近所さん同士が、ここで初めて出会い、今では一緒にホームパーティーをするほどの仲になった。
コロナ禍で3年間会えなかった旧友同士が、偶然この店で再会した。
店内に置かれた地域のエッセイ集を手に取った方が、旧知の著者との思わぬ縁に声を上げた。
コーヒーを待つ15〜20分の焙煎時間が、自然と会話を生み、人と人をつなぐ。

子どもたちもやってくる。
「エクアドルをください」と一人でお使いに来る小学生。522coffee roasterYでコーヒーデビューし、「フルーティーでとても美味しかったです」と言う、微笑ましい中学生。
学校帰りに顔を見せてくれる子どもたちに声をかけるのも、日課になっている。
「防犯というわけじゃないんですけど、顔を出して元気に帰っていくんです。こっちもすごく元気になる」と村澤さん。

何もない住宅街の路地に、人が自然と立ち止まる。
夏の暑い日には、駅まで歩くお年寄りの中継地点にもなるそうだ。そうした積み重ねが、いつのまにか地域の “ホッとできる場所” になっていった。

村澤さんはこのお店を、“娘が、私が一人にならないように作ってくれた場所” だと言う。娘さんの友人たちと一緒に店をつくり、その縁がさらに広がり、誰かとつながり続けている。
「娘がみんなを紐づけてくれているというか、繋いでいってくれているような気がします」。
一杯のコーヒーが生む、朝のゆとり

「コーヒーを飲むと、とりあえず機嫌がいい。香りを嗅ぐと、ホッとする。それがあると、なんか、ちょっと優しくなれる気がします」と村澤さんは笑う。
yohack lifeのノベルティとして届けられるこの一杯は、「存在感があって、でも優しくて、飲んだ後に何かをしてみたくなる」コーヒーだ。

特別な時間のためではなく、毎日の朝のために。ゆとりは、一杯のコーヒーから始まる。
【店舗情報】
522coffee roasterY
住所:神奈川県逗子市山の根3-5-22
営業日:金・土・日・月 12:00〜17:00
アクセス:JR逗子駅から徒歩約8分
